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1月 「学問のすゝめ」

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 仕事がら統計資料や雑誌を読むことが多いですが、本は必要に迫られて、または持っておけばいつか役に立つと思い衝動買いしてしまう傾向があります。本に付箋をつけたり黄色のマーカーで線を引きますが、家内からはマーカーするのは本の人格ならぬ〝本格〞を傷つける行為だから良くないと言われます。

 もちろん借りた本の場合は線を引いたりはできませんから必要な個所はメモを取るということになります。いつだったか橋本五郎文庫で五郎さんが丹念に書評のためのメモを作成しているのを見てとても感動したことがありました。万年筆のインクは綺麗なブルーブラックで、真似をして一時、インクをブルーブラックに替えた時期もありました。

 ところで、そんな本との出会いの中で最近、面白かったのは福沢諭吉著 檜谷昭彦訳「学問のすゝめ」(三笠書房)です。冒頭「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」というあの有名な一節が出てきます。昔、学生時代に文語体の岩波文庫を買って読んだ記憶がありますが、結局は挫折してしまいました。今度は現代語訳ですからスラスラ読めます。本のタイトルは「学問のすゝめ」ですからいかにも〝勉強しなさい〞というような中身かと思われがちですが、至ってざっくばらんで明治5年の堂々のベストセラーでした。

 特に面白かったのは第2編「勉強しない人ほど損な人はいない」の〝地頭と百姓〞、〝旧幕時代の武士と町民〞、〝新政府の役人と人民〞それぞれの身分格差を例に引いて、なぜそんな悪い習性が起きたかというと貧富強弱の差を悪用し、政府が権力の勢いで弱い人民の権利を妨げたからで、これを防ぐためには学問に志し、才能と品格を磨き、政府に対抗して同等の資格と地位に立つだけの実力を持たねばならない、と堂々と説いているところでした。

 また、第11編「ニセモノ紳士の実態」では「国、村、政府、会社などすべて人間社会というのは成人同士の社会であり、他人同士の関係である。そうした人間関係に実の親子の在り方をはめることは実に難しいことである。」と分析していて、今日でも日本には家族的関係を善きものとする価値観がありますが、140年前に既にその本質や問題点を鋭く喝破しています。

 その他にも第12編「効果的なスピーチのすすめ」で述べている学者のあるべき姿や、国の衰退を防ぐため外国との比較・検討を疎かにするなという主張はそのまま現代にも通じます。
 今回、素晴らしい1冊との出会いから思わぬ発見と新しいものの見方を授かりました。本書は現代社会に生きる私達にとって示唆するものがたくさんあり、遠かった福沢諭吉との距離感が一気に縮まった気がします。

 寒さが一段と厳しくなりますが、今月も皆様お元気でお過ごし下さい。